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簡易組織再編

組織再編

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簡易組織再編

簡易組織再編とは、通常合併や株式交換・株式分割などの組織再編には、原則として、株主総会の特別決議が必要ですが例外として取締役会の決定で良いという簡易的な方法のことです。

 

企業規模が資産額の20%以下の小さい組織再編する場合に向いています。例えば、吸収分割や吸収合併、株式交換では合併等の対価の価額が存続する会社の純資産額20%以下の場合に、合併存続会社側の総会決議を省略できます。

 

また、新設分割や吸収分割における分割会社側では、総資産額の20%以下の場合に認められます。商法の場合は5%だったので大幅に緩和されました。

 

例外となる場合

①差損が生じる場合

簿価上の債務超過会社を簿価のまま受け入れる吸収合併や簿価よりも時価の方が低い会社の資産を対価として交付する場合など、組織再編で差損が生じる場合です。この場合は、株主総会でその旨を説明する必要があるので簡易手続きは認められません。

 

②譲渡制限株式を発行・交付する場合

非公開会社(株式譲渡制限会社)が譲渡制限株式を合併等の対価として発行・交付する場合です。商法で認められていたものですが、非公開会社が募集株式を発行する場合には、必ず株主総会の特別決議が必要であることとの均衡をはかったのものです。

 

新規株主が参入してくる場合という意味では、募集株式の発行も簡易組織再編も共通性があるからです。この部分が会社法で中小企業では簡易組織再編が困難になったといわれる理由でもあります。

 

ただ、新株を発行しない組織再編、例えば100%子会社を吸収合併する場合(無増資合併)や、会社分割で分割側になる場合には、新株を発行せず新規株主の参入もないので、非公開会社の中小企業でも可能です。

 

また、株主数の少ない中小企業にあっては、株主総会の開催自体が手間ではありませんので、実務上の影響は少ないと思われます。

 

 

株主保護により通常手続きとなる場合

簡易組織再編をする場合は、株主総会を省略するため株主への通知等の方法により組織再編に関する情報を株主に提供しなければいけないのが原則ですが、情報を受けた株主が組織再編に反対する旨を会社に通知し、それが法務省令に定める一定数に達した場合、簡易手続きは認められません。

 

この場合は、通常の手続きで決めることになります。この一定数は、仮に株主総会を開催したら特別決議で否決できるだけの最低数になるものと思われます。また、組織再編が進行する場合、反対株主は株式買取請求権を行使することができます。

 

以上に対して、会社分割で分割側になる場合には、資産が分離されるだけで新規株主の参入もないため、株主保護の手続きも要求されません。

 

略式組織再編

略式組織再編とは、簡易組織再編と同様に、株主総会を省略し取締役会の決定で済むという制度で、会社法で初めて認められた制度です。親会社のように支配する会社と支配される会社との間の組織再編において、支配されている子会社の総会決議を省略するものです。

 

株主総会を要求しても意味がないという趣旨かと思われます。ある株式会社の議決権の90%以上を支配している親会社を特別支配会社と呼びますが、略式組織再編では、この特別支配の関係を要求しています。

 

本来、総会の特別決議に必要な株主総会の3分の2以上を支配していれば十分なところ、そこまでの割きりはせずに90%以上の支配を要件にしたものです。

 

 

譲渡制限株式が対価となる場合

特別支配会社である親会社が子会社を吸収合併する場合で下記の場合は、略式手続きは認められません。

 

  • ①合併等の対価が譲渡制限株式である
  • ②子会社が公開会社であり、かつ種類株式発行会社でない場合

 

②の会社が定款変更して譲渡制限株式を発行するには、特別決議よりも厳しい特殊決議が必要のため、それとの均衡上、総会の決議を必要としたものです。

 

子会社が非公開会社で、逆に特別支配会社の親会社を吸収合併する際にも、合併等の対価として譲渡制限株式を発行・交付することになりますので、略式手続きは認められません。

 

これは、非公開会社(株式譲渡制限会社)の募集株式の発行には常に株主総会の特別決議が必要であることとの均衡をはかったのものです。

 

株主の保護

略式組織再編では、株主総会を省略するため、株主への通知等の方法により、組織再編に関する情報を株主に提供しなければいけません。略式組織再編行為が法令または定款に違反し、あるいは著しく不当な条件で行われることで、情報を得た株主が不利益を受ける恐れがあると判断した場合には、差し止めを請求することができます。

 

これは、略式組織再編が不当に乱用されることを懸念したものです。特別支配会社である親会社が権利の乱用により少数株主の権利を侵害しやすく、著しく不当な決議がなされる可能性があるためです。

 

株主総会を開催した場合の総会決議取り消しの訴えに対応する制度であるといえます。90%以上という特別多数の議決権を握られていますから、総会の開催を要求しても少数株主に勝ち目はなく、保護するための規定です。もちろん、株主総会が開催されない場合でも、反対株主の株式買取請求権が保証されています。

 

 

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